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ドローンの機体登録義務化 - 概要 -

2020年6月24日に航空法が改正され、「無人航空機の登録制度」が創設されました。
この改正された航空法には2022年6月20日以降、ドローンを飛行させる際は機体の情報登録を国土交通省に行うことが義務化されるとあります。
そしてこの機体登録は2021年12月20日より既に事前申請が始まっています。
従来の手続きと比べて何が変わるのか、登録はどのように行うのかをこの記事で紹介していきたいと思います。

機体登録が義務化された理由

ここ数年で、宅配や災害救助の現場にドローンが導入されたというニュースを目にすることも多くなりました。
利用の拡大とともに問題となっているのが、ドローンの違法飛行の増加です。
航空法違反で摘発された件数は、年間統計を開始した2016年の36件から2019年には111件と3倍以上増加しています。
ドローンの利用者数が増えるにしたがって違法飛行の件数も増えることが懸念されているのです。

機体登録が義務でない現時点では、ドローンが落下して人にケガをさせても所有者が誰であるかすぐに把握することはできません。
捜査から逮捕までは時間を要します。
違法飛行を抑止するため、事件が起きた際に所有者を迅速に把握するために今後は機体と所有者の情報を登録することが義務となります。

従来の飛行からの変更点

これまで、ドローンは機体登録なしでも飛ばすことができました。
航空法で禁止された場所や飛行方法で飛ばす場合でなければ、特に申請を出さずとも航空法上は飛ばしても問題がなかったのです。
(航空法は適用外でも場所の使用許可は別途取得する必要があります)
しかし、2022年6月20日からは場所、方法に限らずドローンを屋外で飛ばす場合は「無人航空機登録ポータルサイト」 という国土交通省のサイトに機体情報を登録しないと飛行できないこととなりました。

また、許可・承認の申請を行っている方はDIPS(ドローン情報基盤システム)を利用していると思われます。
DIPSの中にも機体の情報を入力する項目がありますが、このDIPSへの入力とは別に「無人航空機登録ポータルサイト」に機体情報を登録する必要があります。
ドローンの重量に関しても変更があります。
航空法が適用される機体の重量はこれまで200g以上とされてきましたが、機体登録が義務となる6月20日以降は100g以上に引き下げられます。
2022年6月20日以降、100g以上の機体を屋外で飛ばす場合は許可・承認の要不要に関わらず「無人航空機登録ポータルサイト」への機体登録が必須となります。

有人地帯の目視外飛行(レベル4 )の実現に向けて

所有者を明確にする目的は、違法飛行の取り締まりだけではありません。
現在、ドローンの更なる利便性向上のために有人地帯の上空を飛行できるよう、各制度の整備が進められています。
目指しているのは、ドローンが車のように町の上空を行き交う社会です。

人手不足が問題となっている昨今、ドローンは今まで人が担ってきた業務を大幅に簡略化するツールとして活躍が期待されています。
具体的には、これまで膨大な手間のかかっていた広範囲の点検や農薬散布などがドローンで短時間かつ自動で行えるようになる他、人の少ない山間部や離島などに荷物をピンポイントで運べるという点が主に上げられます。

今後、民間企業が拡大したいと考えているのがドローンを使った街中での宅配サービスです。
ドローンは空中を飛行するため、車のように道路がありません。
信号待ちや渋滞といった制約がなく、建物の上空を越えて飛行できるため車よりも早く目的地に到達することができます。
特にドローンでの配送実験を積極的に進めているのが「楽天」で、有人地帯上空の目視外飛行を試験的に行っているほか、全自動で飛行できるドローンの開発も進めており、ドローンと地上配送ロボットを使って無人配送のシステムを構築することを目指しています。

現状、有人地帯上空の飛行には制限がかかり、特に目視外でドローンを飛ばすことは基本的にはできない事となっています。
人が多い場所の上空を飛ぶ場合、墜落した際に人を巻き込むリスクが高くなります。
一般の人々にとってドローンが町中を飛ぶことにはまだ大きな抵抗があるのです。

その他の法律の問題

有人地帯上空を飛行しづらいのは安全性の問題だけでなく民法も関係しています。
民法は航空法とは別の法律であり、土地の所有権に関する規定があります。
民法の中で「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」とあり、民法に則るとドローンが他人の敷地を無断で飛ぶと所有権の侵害として処罰される可能性があります。

ドローンの利便性を最大限生かすためには「有人地帯上空を目視外で飛行でき」、「許可・承認を待たずすぐに飛ばせる」ことが必要です。
安全と利便性を如何にして両立させるか、その第一歩としてドローンの所有者、もとい責任者を明確にすることが求められています。

機体登録の方法

車では所有者を明確にするために車体の前後にナンバープレートを取り付けています。
改正航空法により、ドローンにこのナンバープレートに該当するものとして「リモートID機器」と「登録記号」が設けられました。
2022年6月20日以降、ドローンを飛行させる際はこの登録記号の表示とリモートID機器のドローンへの搭載が義務となります。
この登記記号とリモートID機器とは何なのか、どのように取り付ければよいのか、機体登録方法をご説明していこうと思います。

登録記号

機体登録を行ったドローン

オンラインでの機体登録申請ページ

登録記号とは、機体の審査及び入金が完了すると通知される「JUから始まる12桁の数字とアルファベットの文字列」です。
登録記号が通知されたら、自分でドローンに貼りつける必要があります。号とは、機体の審査及び入金が完了すると通知される「JUから始まる12桁の数字とアルファベットの文字列」です。
登録記号が通知されたら、自分でドローンに貼りつける必要があります。

登録記号を貼りつける場所

また、登録記号を「貼りつける場所」と「記号の貼り付け方」には決まりがあります。

・ドローンの胴体の表面で、外部から容易に確認できる場所
・容易に取り外すことが出来ない場所(プロペラ、バッテリーの蓋等はNG)
・墜落時に飛散する可能性の低い場所(アーム等は墜落時に紛失する可能性があるためNG)

出典:無人航空機登録要領

登録記号の貼り付け方

25kg以上の機体は25mm以上で表示

25kg未満の機体は3mm以上で表示

・耐久性のある方法(登録記号を印字したシールの貼付、油性ペンでの記載、スプレーによる塗装、刻印など)で、鮮明に表示しなければならない
・登録記号の文字の高さ(縦幅)はドローンの重量が25kg未満で3mm以上、25kg以上で25mm以上でなければならない
・登録記号の表示の色は、表示する場所の地色と鮮明に判別できるものでなければならない

出典:無人航空機登録要領

3mm以上の文字幅でラベル作成をするのであれば、テプラのサイズは9mm以上あれば十分なようです。
機体重量が25kg未満であれば最小3mmの文字幅でも問題はありませんが、機体の大きさに応じて文字もなるべく大きく作成した方がいいでしょう。
弊社はフレーム部分にテプラで作成したシールで貼り付けています。
このほか、紙に手書してテープなどで貼り付ける方法もありますが、雨などに濡れた時に文字がぼやけないよう、防水対策も必要になります。

登録記号の表示が義務となるのは6月20日以降ですが、早めに準備しておいて損はありません。
飛行を繰り返す中でラベルが剥がれてしまったり、文字がかすれてしまったりなど問題が発生したら、貼り方を見直すきっかけにもなります。

リモートID機器

リモートID機器とは、ドローンの識別情報を電波で遠隔発信する装置です。
リモートIDには、ドローンの製造番号および登録記号、位置、速度、高度、時刻などの情報が含まれていて1秒に1回以上発信されます。
なお、所有者や使用者の個人情報は含まれません。
違法飛行や問題がみられるドローンを発見した場合に、警察官や施設管理者がキャプチャ機器という受信装置を使って情報を読み取ることが出来る仕組みです。

リモートID機の内蔵型と外付け型

機器の形は内蔵型と外付型があり、国内で2022年6月以降に出荷されるドローンには全てリモートID機器が内蔵されています。
このリモートID機器は、2022年の6月20日以降に搭載が義務付けられるとお話ししましたが、この件で一番心配されているのは今ドローンを所持している方で、自分の機体にどうやってリモートID機器を搭載するのかということではないでしょうか。

リモートID機器の搭載が免除される例

・2022年6月19日までに機体登録の申請が完了した場合
・あらかじめ国に届け出た特定区域の上空で行う飛行であって、補助者の配置や飛行区域の周囲への明示など安全対策を行った場合
・十分な強度を有する紐(長さ30m以内)によりドローンを係留して飛行させる場合
・警察庁や海上保安庁などが秘匿を必要とする業務で飛行を行う場合

出典:国土交通省 無人航空機の登録ハンドブック

以上の4点があげられます。 この中あればで、「2022年6月19日までに機体登録の申請を完了させること」が最も手間が少ないです。

事前登録の期間を過ぎてしまった場合

お手持ちのドローンにリモートID機器が内蔵されていない場合は、外付型の機器を購入してドローンに取り付ける必要があります。
なお、リモート ID 機能は国土交通大臣が定める要件を満たすものでなければなりません。
この国土交通大臣が定める要件とは何か、 無人航空機登録ヘルプデスクの方に確認したところ「リモートID機器の形状に危険性がないこと」ということだそうです。(2022年1月時点)
機器に鋭い突起物が付いている、危険な素材が使われているなど、リモートID機器そのものが危険性を持っている場合は搭載ができないとのこと。
現状の要件は形状の安全性のみを指していますが、今後の事故状況などにより要件は増える可能性があります。

機体登録の方法

飛行前には必ず「登録記号」及び「リモートID機器」の状態を確認しなくてはなりません。

・2022年6月19日までに機体登録の申請が完了した場合
・あらかじめ国に届け出た特定区域の上空で行う飛行であって、補助者の配置や飛行区域の周囲への明示など安全対策を行った場合
・十分な強度を有する紐(長さ30m以内)によりドローンを係留して飛行させる場合
・警察庁や海上保安庁などが秘匿を必要とする業務で飛行を行う場合

出典:国土交通省 無人航空機の登録ハンドブック

③はリモートID機器の取り付け方を指定していますが、「適切な取り付け方」とはどのように行えばよいのでしょうか。

無人航空機登録ヘルプデスクの方に確認したところ、「メーカーごとに取り付け方法は異なるため、メーカーが推奨している取り付け方で行ってください」とのことでした。(2022年1月時点)
ですので、リモートID機器の説明書に記載されている方法で取り付ける、方法の記載がなければメーカーに問い合わせて確認すれば問題ないようです。
外付型リモートID機器を製造しているメーカーのページを見ると、ドローンにリモートID機器を養生テープで直接貼り付けているところもあるようです。

機体登録の方法

機体登録の進め方

機体登録の方法は「オンラインでの申請」と「書面による申請」の2種類あります。
オンラインでの申請は無人航空機登録ポータルサイト 「ドローン情報基盤システム2.0」 より行います。
書面による申請は、国土交通省HP 無人航空機の登録制度 に掲載されている「登録申請書」を印刷して必要事項を記入後、所定の住所へ郵送する申請方法です。

申請を行うにあたり所有者の本人確認を求められます。
オンライン申請と書面申請で本人確認に使えるものが異なりますので下の図を参照の上、準備を行ってください。 本人確認書類の詳細は下記をご覧ください。

オンライン申請 書面申請
法人 ・GビズID ・本人確認書類
(法人は登記簿謄本または印鑑登録証明書)
個人 ・マイナンバーカード
・運転免許所またはパスポート
・本人確認書類
・本人確認書類

手数料について

申請方法 本人確認方法 1 機目 2 機目以降※
オンライン ①マイナンバーカードに記録された電子証明書を送信する方法 900 円 890 円/機
②GビズIDのアカウントにログインする方法
③運転免許証又はパスポート及び顔面の画像データを用いた顔認証を実施する方法 1,450 円 1,050 円/機
④本人確認書類を郵送する方法 1,450 円 1,050 円/機
書面 ①マイナンバーカードに記録された電子証明書を送信する方法 2,400 円 2,000 円/機

※同一の申請者が登録又は更新申請を同時にする無人航空機の数が2以上の場合に限る。

出典:「令和3年11月25日制定(国官参次第 116 号)無人航空機登録要領」(国土交通省)引用

上記はいずれも満額で、消費税などはかかりません。
機体登録はオンライン申請と書面申請どちらも手数料がかかります。
申請方法によって手数料に大きな差が出ますので、これから機体登録される方はご自身のやりやすい申請方法と金額を加味して、どの方法で行うのが一番よいのかをご検討ください。

機体登録の方法

今後は、ドローンの飛行前確認が義務となるので、リモートID機器や登録記号の状態も事前に確認する必要があります。
安全なドローン社会実現のためにはパイロット一人一人の協力が必要です。
国土交通省の「無人航空機登録ヘルプデスク」にて問い合わせも対応していただけるので、早い時期から準備を進めていきましょう。

無人航空機登録ヘルプデスク

TEL: 050-3818-9961
受付時間:平日午前9時から午後5時まで
土・日・祝・年末年始(12月29日から1月3日)を除く

この記事を書いた人

講師・ドローンパイロット

上野

筆者プロフィール

入社4年目の2021年7月に前部署より秋葉原ドローンスクールの部署へ、
その後2021年8月よりJUIDA公認講師して活動中。
インドアなので夏の日差しにも、冬の寒さにも弱い。

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